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オフィスデザイン、事務所移転、内装工事レイアウト設計のフロンティアコンサルティング
2018.07.06
「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。」
そうだ、確かに使っていなかった。
使っていなかったくせにいつでも繋がると思っていた僕を責めるような機械的な音声が悲しかった。
東京に来て初めて住んだ街で、仕事帰りに1人でゆっくりお酒を飲める店を見つけて嬉しかった。
と言ってもお洒落なバーやラウンジのようなところではなく、夫婦で切り盛りしているおでん屋さんだ。
【JAZZが流れるおでん屋さん】
そのコピーに一目惚れし、建てつけの悪い引き戸を開けると、
金髪のマスター、横には笑顔の素敵な奥さん。
マスターの好きなものを詰め込んだという店内には、古いJAZZのレコード、変なポスターや手書きのイラスト、どこの国のものか分からないような小物達が並び、
温かい照明の光と立ち上るおでんの湯気と共に素敵な空間を演出していた。
僕はいつもカウンターに座った。
マスターの「後姿だけでイイ女か分かる」という胡散臭いバカ話に笑ったり、
ママから夫婦生活のアドバイスをもらったりしながら、おいしいおでんとビールを味わった。
時には隣に座った初対面の人も交えて会話が盛り上がったこともあった。
引越で街を離れることになった時、
街自体も勿論だが、この店に寄れなくなることがとても寂しかった。
東京の両親から離れるような気持ちもあった。
だから、結婚を機に近くに戻って来ることになった時は嬉しかった。
また通える。そう思っていたのに、3年もの間店には行かなかった。
仕事や子供が産まれたことで忙しくなり、既に僕の中では「わざわざ」行く店ではなくなっていた。
職場の近く、家の近く、どこにでも居酒屋はあった。
それでも、新卒で入社した会社の当時の同僚と、近いうちに飲みにでもいこうというやりとりをした夜、
当時の記憶がふと蘇り無性に店に行きたくなった。
そう、思えば3年も会っていない。
子供ができた。転職した。ずっと勉強していた資格に合格した。
報告したいことがたくさんあった。
友人と会う日の予約をしようと思ったが、時間が経ちすぎて電話で話すのは照れくさく、
久しぶりのおでんを食べながら、次の約束をしてこようと店まで足を運んだ。
変わらず笑顔で迎え入れてくれる2人の顔を想像しながら、駅から少し離れた国道沿いに光るネオンの看板を目指し速足で歩いたが、
ここだと思っていた場所に近づいてもその光は見えなかった。
その代わりに視界に入ったのは、荷物が散らかり締め切られた入口だった。
信じられなくてすぐに電話をかけた。
その番号は現在使われていなかった。
更新しないグルメ情報サイトに怒りが沸いた。
あんなに伝えたいことがあったはずなのに、逆にこっちが伝えられたくなった。
何かあったのだろうか。
今も元気なのだろうか。
なぜ閉めてしまったのか。
閉めるのなら連絡ぐらい、、いやそこまで通ってもいないくせに烏滸がましいか。
同時に恥ずかしくもなった。
僕の変化を知って欲しい、聞いて欲しいと思っていたけど、
誰にだって変化する権利はあるのだ。
自分だけが変化を楽しみ、それを周りの皆は、変わることなく温かく見守ってくれているだなんて自分勝手で呑気な妄想だった。
いつでも伝えられると思うなんてやめよう。
移転もそう。改修だってそう。
いつかやろうと先延ばしにしてはいませんか?
オフィス移転はフロンティアコンサルティングへご連絡を。
電話番号は現在も使われているので大丈夫です。